WORK FOR にっぽん(旧(WORK FOR 東北) - ともに働く。ともに育つ。

日本財団

半年たって掴んできたそれぞれの手応え 富士通システムズ・イースト→石巻市産業部産業推進課 主事 岩見航介 氏 よしもとクリエイティブ・エージェンシー→石巻市産業部商工観光課 主事 兼松辰幸 氏

石巻市で働くまでの経緯を教えてください。

岩見 総務省の若手企業人地域交流プログラムに私の会社が参加することになり、上司の推薦と、自分の希望とで石巻市に行くことが決まりました。職場が仙台だったこともあり、何か復興に役に立ちたいと常に思っていました。その機会が会社のボランティア活動くらいしかない中、行政の中で仕事ができるということで、より貢献できるのはと思い希望し、4月から働いています。

兼松 私も同じプログラムでの派遣です。吉本興業で働いていて、出身地の愛知県に芸人と一緒に住み、地域密着の活動をマネジメントしていました。被災地の自治体で任期付き観光課職員の募集があると聞き、復興に向けて働く中で成長もできると思い希望しました。3月中旬に副社長から直々に「石巻で修行や」と決定を告げられ、半月で急いで引継ぎなどを終え、4月に石巻市に入りました。

現在はどのような業務を担当されていますか。

岩見 一言で言うと、市内の被災企業の支援です。堤防を作ったり盛り土をしたりする事業を国と自治体とで進めていますが、それによって移転を余儀なくされる事業者が少なくありません。その中で自力で移転先を見つけることができず、困っているという企業を一つ一つ回ってヒアリングしています。昨年から内陸部の田んぼを産業団地にする計画が始まっていますが、移転へ向けた調整や補助金獲得などにおいて事業者のサポートをしながら、団地建設に向けた土台を作っています。たとえば土地の確保は、民間同士でやり取りをすると値段がつり上がってしまうので、行政が貢献できる分野です。

これまで25社くらいの企業を回りましたが、ヒアリングをしているとやはり困っている企業が多いです。建設関係は現在仕事多い状況ですが、まだまだ中小企業では再開できてないところもあります。

兼松 まずは、4月にリニューアルした市のウェブサイトの観光ページのコンテンツが弱かったので、それを充実させる仕事でした。前職の印象があるのか、フェイスブックページの管理や観光ガイドブックのリニューアルなど、外に発信する仕事をさせてもらっています。素材をもらいに行ったり取材して記事を書いたりと、編集者のようなイメージですね。10月末、石巻市では慶長遣欧使節出帆400年を記念した大きなイベントがあり、その準備や現場業務を担当しました。最初は裏方でしたが、徐々に前面に出て仕事をするようになり、自分で動ける幅が広がってきています。イベントのPRでテレビやラジオに出演もしました。

およそ半年働いて感じたことや、現在考えていることを教えてください。

岩見 まずは仕事と職場に慣れることを目標にしてきました。仕事を任せても大丈夫だという安心感、信頼感を作らないとその先がないと思ったからです。半年たった今では冗談も言えるようになり、その中でもちゃんと仕事をやるという感じになってきました。
 臨時職員としての動き方も分かってきました。最終的な文書の作成など、職員の方じゃないとできないことは必ずあるんですね。私はそれをサポートし、また他の仕事をやることでチーム全体として仕事量が分散させるようなことをやれたらと考えています。しかし、職員の方と遜色なく働けるようになったとしても、やはり90%くらいにしかなりません。残りの10%をどういう形で貢献するか、早めに答えを出さないともったいないと思っています。
 また、何でこれをしなければいけないのかを意識して仕事を進めています。民間だと仕事がお金に直結していますが、行政だと「なぜやっているのか」という部分が弱いと感じることが多いので。「前からやっているから」だけという場合も少なくありません。民間の感覚をよい形で他の人にも伝播させていけたら嬉しいですね。
 他にも、ずっと中にいたら気づかないような点はあると思います。半年たって慣れてきましたし、おかしいと思った事は積極的に発言して、外から来た人間の価値を発揮していきたいです。

兼松 最初は右も左も分からない中で、教えたもらった通りに事務作業をこなすだけでした。その後も早く覚えることを覚えて、余計なことはしないようにと思っていましたが、10月にあったプログラムの研修会で転機が訪れました。他の自治体に派遣された若手の方や、佐賀県武雄市長の樋渡さんなど、枠にとらわれない活動をしている方の話を聞いて、このままじゃ駄目だなあと思いましたね。「郷に入っては郷に従え」で、半年は仕事に慣れる時間だと思っていましたが、民間からきた意味は違うのではないかと気付きましたね。
それからは、駄目と言われても良いから思ったことは口に出そうと心掛けています。個人的には、環境省の事業で東北の太平洋側にトレイルコースを作る「みちのく潮風トレイル」を石巻に早期に呼び込みたいと考えています。全国からいろいろな人が石巻に集まっているので、その中で動くことで多くの出会いもあると思います。新しいことを新人が立ち上げるのは難しいでしょうが、どうにか話の中に入って、泥臭く取り組んでいきたいですね。

今後の展望について教えてください。

受け入れの担当となった復興推進課の蒲原係長(中央)、昨年同じく東京から浪江町に勤務開始したふるさと再生課の菅野さん(左)と

岩見 役場では民間の時とは全く違う人と出会い、違う分野の仕事ができるので毎日非常に楽しんでいます。何か「これをしよう」と決めすぎると難しいことも出てくるので、先入観を持たずにどんどん新しいことにチャレンジしていきたいです。ただ、10%の部分は早く埋めたいですね。2年間の任期を振り返ったときに、自分はやりきったと胸を張っていたいです。上から降りてくる仕事だけでなく他のルートで仕事をしたり、役場内の別のグループで仕事をさせてもらったりして、100%の貢献をできるようにしたいですね。

兼松 半年でやっと仕事に慣れ、まさにこれからという所です。現地の方との関係もできてきました。9月に北海道・東北B-1グランプリに出場したんですが、あっつい地元の方々と一緒に焼きそばを売って、夜はお酒をくみかわし、最高でした。これからもっともっと外に出て、土日使ってでもネットワークを拡げたいと思っています。
仕事は役場の難しさは無くありませんが、とにかく楽しいです。ここまで地域の方々と一緒に仕事することはありませんでした。今までは芸人さんのサポートでしたから。ここで今まではなかった地域の方や自治体からの視点、被災地ならではの視点などを勉強して、会社に持ち帰って還元できればと考えています。

<受入自治体の声>

産業部次長 山下和良 氏

産業部次長 山下和良 氏

 復興においてマンパワーやノウハウが不足している中、2人とも現場での仕事をよくこなしてもらっていて、非常に感謝しています。加えて、復旧は「元に戻す」ものですが、復興は「高みを目指す」ものです。今抱えている多くの課題に対して「こうやってクリアできるのでは」と助言をしてもらうだけでも、行政には刺激になります。
 何より公平性が求められるのが行政ですので、動きづらいところはあるかと思います。全てをすぐに変えることはできませんが、民間の考えと行政の考えをぶつけ合う中で効果が生まれてくるのではないでしょうか。例えば、「みちのく潮風トレイル」は、点ではなく線で被災地を元気づけようとするものです。私たちと違う目線を持っている民間の方々は、私たちから見ればプロ集団。その目線から見たときに生まれる「こういうトレイルなら面白い」という考えが出てくることを期待しています。
 行政には「行政の枠」があると言われます。ただ、大震災からの復興をめざす中で、今まで通りの役所ではやっていけません。これまで自分たちで作ってきたルールを壊すという意味で、違う目線を持つ民間の方が来てくださることは、役所が変わるチャンスだと思っています。今後もどんどん活躍してもらいたいと期待しています。

(2013年11月5日取材)

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