WORK FOR にっぽん(旧(WORK FOR 東北) - ともに働く。ともに育つ。

日本財団

地域の声〜福島県浪江町〜

外部と連携した部署横断の「協働」体制で「人口増加」に備える

産業振興課 課長補佐 蒲原(かんばら)文崇氏総務課 主任主査兼行政係長 松本孝徳氏まちづくり整備課 計画係 菅野(かんの)孝明氏総務課 主任主査兼行政係長 松本孝徳氏(中央)
産業振興課 課長補佐 蒲原(かんばら)文崇氏(左)
まちづくり整備課 計画係 菅野(かんの)孝明氏(右)

福島第一原発事故の影響で全町避難が続く福島県浪江町。町民が全国に避難する厳しい状況下ですが、民間人材を積極的に受け入れながら懸命の行政運営を続けています。そしてこの間、外部のノウハウを取り入れることで、新たな取り組みや組織の協働体制を構築してきました。外部人材の活用における成果、そして2017年3月末を目指す避難指示解除(帰還困難区域除く)を見据え人手が必要となる中、どのような採用計画を立てているのか。総務課の松本孝徳主任主査兼行政係長(中央)と産業振興課の蒲原文崇課長補佐(左)、そして2012年から民間出身の任期付職員として赴任しているまちづくり整備課計画係の菅野孝明氏(右)に話を聞きました。

外部人材活用実績

民間人材を受け入れた経緯と、これまでの実績を教えてください。

風通しのいい職場環境。外部人材が溶け込みやすい空気を醸成している。風通しのいい職場環境。外部人材が溶け込みやすい空気を醸成している。

蒲原:2012年にNPO法人ETIC.の人材派遣スキーム「右腕プログラム」を通じて、菅野さんを迎え入れたのが最初の案件でした。国や地方自治体の応援職員ではなく、民間の人材を受け入れたのは県内初に近い早いタイミングでした。菅野さんを採用できたのは、震災当時、県から出向していた職員の存在があったからです。その県職員がすぐに民間のスキルが必要になると判断し、彼自身がもつ県などとの幅広い人的ネットワークを活用することで、ETIC.のスキームを利用することができました。

松本:その後は菅野さんの活躍もあり、外部人材を積極的に活用させてもらおうという機運が高まりました。「WORK FOR 東北」(現・WORK FOR にっぽん)などを利用して採用した任期付職員は10人ほどに達しており、他にも復興庁の制度など様々な手法を利用して多くの民間人材を受け入れています。担当業務は、復興計画の進行管理などのマネジメントから、広報や漁業、土木、文化財保護など専門性の高い業務まで多岐にわたります。

募集・採用時

必要な業務に対して適切な人材をマッチングさせることは、決して簡単ではありませんよね。

外部から広報業務の担当者も受け入れ、町の情報を積極的に発信している(写真:担当者による馬場町長へのインタビュー)外部から広報業務の担当者も受け入れ、町の情報を積極的に発信している(写真:担当者による馬場町長へのインタビュー)

松本:通常、採用・人事を担当するのは総務課ですが、復興事業を計画・実行するための採用業務に関しては現場に近い企画課を中心に行いました。担当者レベルで議論することで、求める人材像を具体的に提示でき、赴任後のミスマッチの防止に役立っています。

蒲原:決して履歴書だけで判断せず、担当課の職員が応募者と実際に顔を合わせることを重視しています。例えば、東京への出張の際などには応募者とコンタクトをとり、積極的に会うようにしています。メディアを通した間接的な情報だけでは応募者との間に誤解が生じている可能性があるため、職員や町民など当事者のリアルな視点と現場の状況を直接伝えるようにしています。正式な採用面接の前にこうしたステップを踏んだ人ほど、赴任後に長く活躍してくれる傾向にあります。

面接の際、どのようなことを採用基準として重視していますか。

松本:募集案件に対する専門的な知識やスキルに加え、「周囲に耳を傾けられるか」という点も重要です。復興への熱意だけが先行すると空回りしてしまう危険があります。町民の声に耳を傾け、根気強く対話しながら事業をじっくり組み立てていく姿勢が必要です。

菅野:私も採用に加わる際には、応募者に対しては赴任後の業務内容は変化する可能性があることを率直に伝えるようにしています。私自身が経験したことですが、復興現場のニーズはフェーズとともに刻々と変化していきます。当初定められた業務だけでなく、そうした変化の中でも必要とされる役割について自ら考え、実行できる柔軟性が求められます。

赴任後

行政は、民間企業とは業務遂行のスピード感などが違うとよく指摘されますね。

菅野さん(後列中央)をはじめ、民間出身者も数多く活躍している。菅野さん(後列中央)をはじめ、民間出身者も数多く活躍している。

菅野:赴任当初は、その違いを痛感しました。承認までに必要な書類の作成や組織内の手続きが煩雑で、必要以上に時間がかかるのです。それを知ってからは、その工程を逆算して入念に計画を立てるようにしました。また、別の部署の姿が見えにくく、独立して仕事をしている傾向も顕著にありました。いわゆる「縦割」ですね。ただ、私のような外の人間が日常的にコミュニケーションを促すような行動を重ねる中で、次第に部署を越えた「横」のつながりや連携も生まれるようになっています。

慣れない土地での生活や仕事に、苦労するような人はいませんか。

松本:そうしたケースは、ほぼありません。もともと組織の風通しは比較的よく、疑問や不安を口に出しやすい環境があると思います。加えて、業務外で食事やお酒を飲み交わす機会も多く、登山や釣りなど共通の趣味を通して休日をともに過ごすようなケースも少なくありません。これは、町に根付く文化が影響していると思います。この町には飲食店が多く、歴史的に「食」を通じて人が互いに触れ合う風土があります。それが外部の人を自然に受け入れ、すぐに打ち解ける雰囲気をつくっているのではないでしょうか。

成果と展望

外部の民間人材を活用したことで、どのような成果が生まれましたか。

タブレット端末の町民向け講習会の様子。タブレット端末の町民向け講習会の様子。

蒲原:まず、事業の組み立て方が変わってきました。かつては縦割の組織体制ゆえに、各部門の調整に多くの時間を費やしていました。私たちにとって当たり前だったそうしたプロセスが、外部の人の指摘によって見直されるような動きがみられます。具体的には、事業を企画段階から各部署が連携して進めることで、立案後の二重三重にわたる調整の手間が省けるようになってきました。
また、30代を中心に若い職員の意識が変化していることも大きいですね。主体的に考え、主張したり実践したりする職員が増えました。外部人材の力ばかりに頼り続けるわけにはいきません。彼らの成長は、町の将来にとって明るい材料といえます。

菅野:全国に避難する町民に情報を届けるためのタブレット端末の配布など、具体的な事業の成果は数多くあります。ただ、それ以上に大事なことは、そこに行き着くまでのプロセスにあります。1つの事業・企画に対して部署を越えて多くの職員が携わり、苦労や成果を共有するプロセスです。例えば、3月に策定予定の第2次復興計画は、数多くの部署と職員、そして町民らが意見を出し合って策定作業を進めています。こうした「協働」のプロセスが浸透すれば、より効果的で意義のある取り組みが生まれやすくなると思います。

今後、外部人材を積極的に活用する考えに変わりはありませんか。

昨年10月、町役場本庁舎内にオープンした仮設商店街。住民帰還と新たなまちづくりがいよいよ動き出す。昨年10月、町役場本庁舎内にオープンした仮設商店街。住民帰還と新たなまちづくりがいよいよ動き出す。

蒲原:これは絶対に必要なことだという認識を組織全体で共有しています。特に、避難指示解除に伴って住民の帰還が進む今後は、新たな課題が次々と出てくるでしょう。むしろ、これまで以上に民間人材のノウハウが必要になる場面が増えると思います。具体的には現在、新たに立ち上げるまちづくり会社をマネジメントする人材などを募集しています。

菅野:今後は復興公営住宅などのハードの整備から、コミュニティの再構築へと業務のニーズが大きく変化していくことになります。そうした意味でも民間人材は確実に必要で、さらに行政への採用だけでなく、町内で事業を再開する民間企業・団体をサポートする右腕人材を送り込むような必要性も高まってくると考えています。

震災から6年近く経ち、人材確保は難しくなっていると言われます。募集にあたり、何を伝えたいですか。

蒲原:避難指示の解除を控え、いよいよ本当の意味で「復興」に立ち向かう段階に入ります。「マイナスからゼロ」ではなく「ゼロからプラス」に向かっていく前向きなメッセージを伝えたいですね。帰還や事業再開に悩んでいる町民が数多くいるので、そうした心境に寄り添いながら、一緒にチャレンジしていくことにやりがいを感じてもらえると嬉しいです。

松本:これから町では、全国の地域とは真逆の「人口増加」の現象が生じることになります。ここは海や川、山、畑に囲まれた自然豊かなフィールドです。豊富な地域資源を活用して、どこにもない新たなまちづくりに挑戦してほしいと思っています。

(2017年1月27日取材)

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