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日本財団

地域の声〜宮城県石巻市〜

6次産業化、情報発信、海外展開———民間のノウハウ活用し、新たな事業を生む

総務部人事課課長 岡道夫氏産業部商工課主査 白石江里菜氏総務部人事課課長 岡道夫氏(左)
産業部商工課主査 白石江里菜氏(右)

東日本大震災の発生後、全国各地から多くの外部人材を受け入れてきた宮城県石巻市が、主産業である漁業の6次産業化や、地域の情報発信などで民間のノウハウを有効に活用しています。そうした数々の成果を受け、新たに水産加工品の海外展開を計画。さらに、観光や移住促進の分野でも外部との協働に乗り出す方針です。総務部人事課の岡道夫課長(左)と産業部商工課の白石江里菜主査(右)に、これまでの実績や今後の展望を聞きました。

外部人材活用実績

外部人材の活用は、どのように始まりましたか。

コンテンツが人気で、読者を増やしているWEBマガジン「ぼにぴん」コンテンツが人気で、読者を増やしているWEBマガジン「ぼにぴん

:東日本大震災の発生直後は職員不足が深刻で、藁をもすがる思いで全国の自治体から応援職員を派遣してもらいました。また、民間の分野では「WORK FOR 東北」(現・WORK FOR にっぽん)、総務省や復興庁の復興支援員制度などを通じて建設・土木の技術系から事務系まで様々なキャリアを持つ人材を受け入れ、さらにトイレなどの住宅設備機器メーカーであるTOTO株式会社からは現役社員を派遣いただいております。現在までに、「WORK FOR 東北」を含めた民間人材の派遣実績は15人に達しています。
行政にはない、民間ならでは「機動力・フットワークの軽さ」や「発想力・アイデア」は新鮮で、その影響は非常に大きいですね。特に、6次産業化・地産地消推進センター(以下、6次産業化センター)が最も成果を上げています。

6次産業化センターの役割と、具体的な成果を教えてください。

「石巻さかな女子部」で、アンコウをおろす部員たち。興味津々の様子が伝わってくる。「石巻さかな女子部」で、アンコウをおろす部員たち。興味津々の様子が伝わってくる。

白石:6次産業化(※)に取り組む漁業・農業などの地元事業者を支援する目的で、2014年に市が設置。市の運営管理下で、実務は外部の業者に委託しています。具体的には、商品開発や販路拡大、プロモーション、経営改善など総合的にサポートしています。現在は、スタッフ全員が外部人材で占められています。

特に力を入れた取り組みの1つが、地元事業者の商品を販売するECサイト「石巻いっぴんマーケット」の立ち上げです(昨年末に終了)。商品だけでなく、各事業者の開発ストーリーなども交えながらPRし、商品の知名度や売上アップを後押ししてきました。6次産業化センターからの支援員の派遣や市助成金の利用により開発された商品には、地元の米と海の幸を使った「石巻浜ごはん」(株式会社まめ福フードカンパニー)などがあります。
また、課題だった情報発信では今、新たな成果が生まれています。地元の食材を使ったレシピや土産品、観光・イベント情報などを配信しているWEBマガジン「ぼにぴん」が、予想を上回るペースで読者を増やしているのです。東京でフリーライターをしていた女性にディレクションを担当してもらっていますが、魅力的なコンテンツが多く、人気を集めています。その1つに、魚屋に弟子入りし、魚をおろして料理をつくる「石巻さかな女子部」という企画があります。地元の祭りに出店したり、新たにメンバーに加わる住民が現れたりするなど、地域の魚食文化を盛り上げるような動きに発展しています。

※6次産業化:農業や漁業などの1次産業者が、加工(2次産業)や流通・販売(3次産業)まで一体で行うこと。付加価値の高い商品開発などにより、事業者の所得向上が期待できる。

募集・採用時

新たな人材に、地域で力を発揮してもらうのに必要なことは何でしょうか

白石:業務のミッションを、できるだけ具体的に提示することが大切だと思います。受け入れる自治体は、求める人材像や能力・ノウハウを明確に設定することで、応募者も業務を具体的にイメージしやすくなり、やりがいやモチベーションが高まる傾向があります。また、応募者の適性を見極め、適材適所の配置を心掛けています。過去には、応募された案件ではなく、他の案件の方が適性があると判断した場合には、応募者と関係部署と丁寧な協議を重ね、違う案件を担当してもらったこともあります。
一方で、市民の目線ではそうした外部人材も同じ「公務員」であることに変わりはありません。不要なトラブルを防ぐためにも、身なりや挨拶の仕方、言葉遣いなど、市職員としての自覚をもって最低限守ってほしいことを、マニュアルを作成して伝えるようにもしています。

:行政の内部に入り込むと、どうしても1つのコマとして動かざるを得ない状況に陥りがちです。その点、6次産業化センターは市の委託事業であるため、形式的には独立した組織になります。市と一定の距離を置くことで業務の裁量の余地が広がり、結果的に外部の人がパフォーマンスを発揮しやすい状況が生まれました。

赴任後

赴任者が、民間での業務経験とのギャップに困惑することはありませんか

白石:赴任者の多くは熱意に溢れており、一刻も早く企画や事業を進めたいと考えます。しかし、行政特有の承認手続きがそれを阻んでしまうようなケースがあります。そうした場合に必要なのは、両者の間に入って臨機応変にバランスをとる「調整役」の存在です。赴任者の思いを尊重するスタンスを保ちつつ、行政の文化・気質にも理解を示せる。例えば、他自治体の応援職員などがそうした役割を担うとバランスがとりやすいと思います。
また、昨年から産業部内を中心に参加者を募り、10人前後の小さな勉強会を隔週ペースで開催しています。全国各地からバッググランドの異なる人が大勢集まっているので、毎回特定の人を講師役に自身の仕事観や趣味などを共有しようという催しです。そこでの学びを業務に活かしたり、部署の垣根を超えて交流できるような場にしたいと思っています。

成果と展望

外部人材を受け入れることで、組織内部や地域にどのような変化が生まれましたか

6次産業化・地産地消推進センターでは、外部人材が数多く活躍している。6次産業化・地産地消推進センターでは、外部人材が数多く活躍している。

:震災以降、外部の人を迎え入れる素地は随分と広がりました。また、彼らの懸命な姿や独自のアイデアを目の当たりにすることで、特に若い職員の意識が変化しているように思います。「こういう方法もあるのか」といった刺激に触れ、新しい発想を生み出すような土壌が少しずつ広がっていくことを期待しています。
6次産業化センターとしては今後、主産業の水産加工品の輸出に力を入れていきます。震災によって失われた販路を回復させるのは、容易ではありません。ただ、地元事業者の間には「危機をチャンス」と捉えて変化を恐れない意識が広がっており、新たにアジアを中心とした海外に活路を見出そうという狙いです。

昨年、「石巻食品輸出振興協議会」を設立。海外展開に力を入れていく。昨年、「石巻食品輸出振興協議会」を設立。海外展開に力を入れていく。

白石:こうした計画策定は、センター長の存在なしには語れません。センター長は長く民間企業で海外事業を担当していた外部の人材で、震災後に赴任しました。海外を相手にした交渉や煩雑な手続きは市役所だけでは難しいのが実態ですが、輸出業務に精通している彼の活躍もあって、少しずつ前に進んでいます。昨年、地元事業者と行政が連携して「石巻食品輸出振興協議会」を設立し、センター長も役員として精力的に活動しています。今後、少しずつ具体的なアクションに移していきます。

外部人材の活用について、今後の期待と方針を教えてください。

白石:6次産業化センターは今年度で役目を終える予定でしたが、成果が出ているため活動を延長する方向で調整中です。メンバーの中には、石巻での起業や定住を望む人もいます。派遣は有期形態ですが、任期を終えた後も地域に関わり続けてくれるのはとても心強いですし、そうした機運を高めていくことが必要になるでしょう。

:私たち上の世代が、若い職員などに生まれつつある意識の変化をどう受け止め、組織として熟成させられるかが今後の課題になるでしょう。いずれにしろ、今後も新しい人材を積極的に募集していきます。市としては現在、交流人口の増大を視野に入れており、DMO(※)の設立を主導してくれる人材を求めています。また、移住促進の分野でも外部人材の活用を考えています。いずれも市職員の力だけで解決できるような課題ではありません。6次産業化センターをはじめとするこれまでの成果と手応えから、外部のノウハウを活用することは地域活性化にとって非常に重要だと考えています。

※DMO:Destination Management/Marketing Organizationの略称。観光による地域活性を戦略的に推進する組織・機能

(2016年11月29日取材)

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