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地域の声〜石川県七尾市〜

学生インターンから生まれた「能登の人事部」が、企業の経営を革新する

株式会社御祓川 ひと育て課シニアコーディネーター 森山明能(あきよし)氏(左)/ひと育て課コーディネーター 岡本竜太氏(右)株式会社御祓川 ひと育て課シニアコーディネーター 森山明能(あきよし)氏(左)/ひと育て課コーディネーター 岡本竜太氏(右)株式会社御祓川
ひと育て課シニアコーディネーター 森山明能(あきよし)氏(左)
ひと育て課コーディネーター 岡本竜太氏(右)

能登半島の玄関口に位置する石川県七尾市は、地域課題の解決に外部人材のノウハウを活かしています。主導しているのは、民間資本で1999年に設立されたまちづくり会社・御祓川(みそぎがわ)です。大学生のインターンシッププログラム「能登留学」などを仕掛け、若い世代のU・Iターンで成果を上げています。同社ひと育て課の森山明能シニアコーディネーターと岡本竜太コーディネーターに、その秘訣を聞きました。

外部人材活用実績

まず、どのような活動を実施していますか。

森山:2011年から、大学生の長期滞在型インターンシッププログラム「能登留学」を実施しています。今、「働き方」が多様化しており、若い世代でも「地方で働く」ことに興味をもつ人が少しずつ増えています。一方で、地元の中小企業は経営者の高齢化など、多くの経営課題に頭を悩ませています。新しい事業を立ち上げようとしても、その担い手が不足していたり、新しいアイデアがなかなか浮かばなかったりするのが実情です。そうした中小企業を中心に、課題解決の担い手として大学生を送り込むプログラムです。3〜6カ月の長期滞在型が中心ですが、4〜6週間程度の短期プログラムも用意しています。

どのような反響がありますか。これまでの実績を教えてください。

学生たちは企業の経営をサポートし、自身のキャリアプランを考える機会になっている。学生たちは企業の経営をサポートし、自身のキャリアプランを考える機会になっている。

岡本:長期プログラムの参加者は110人に達しています(2016年12月現在)。約7割が県外の大学で、東京や大阪、名古屋、福岡など都市圏からの参加が目立ちます。これをきっかけに、12人のU・Iターン者が生まれました。
一方、学生を受け入れた地元企業は20社を超え、計30以上の新規プロジェクトが実施されました。導入した企業の多くはその後も、継続して学生を迎えたり、受け入れをきっかけに新卒採用に力を入れたりしています。インターン生は中小企業の経営をサポートしながら自身のキャリアを考えるきっかけに、また企業にとっても新しい風が舞い込むことが期待できます。

募集・採用時

両者を適切にマッチングさせるために、どのような工夫をしていますか。

毎月、「キャリア相談会」を開催。ワークショップや交流会も取り入れている。毎月、「キャリア相談会」を開催。ワークショップや交流会も取り入れている。

森山:最も重要なことは、プロジェクトの課題整理と目標設定を綿密に設計することです。企業が抱える課題を丁寧なヒアリングから明確に「見える化」し、学生に解決してもらいたいプロジェクトを具体的に設計します。「経営改革」「商品企画」「プロモーション」など学生にわかりやすい言葉でカテゴライズし、さらに目標設定も明確にします。
例えば、ある料理店の経営を立て直すプロジェクトでは、「毎月◯万円アップ」などと具体的な売上目標を提示します。課題抽出・分析から改善点の企画、具体的なアクションまで実践的な業務を担うことで、学生の意欲を引き出し、スキルもしっかり身につけてもらおうという狙いです。

岡本:学生向けに「キャリア相談会」と題した説明会も開催しています。東京などの都市部にも遠征し、プログラムの説明のほかにワークショップや交流会も織り交ぜているほか、毎月継続的に行うことや、各自のキャリアデザインからインターンの必要性を考えることなどを意識しています。また、参加できない人にはインターネット電話で担当者と1対1のWEB面談も行っています。こうした事前の相談にも力を入れていますね。

赴任後

インターン中の企業と学生双方へのサポートも大切ですよね。

インターン期間中はシェアハウスに宿泊でき、他の学生との交流も深められる。インターン期間中はシェアハウスに宿泊でき、他の学生との交流も深められる。

岡本:専属のコーディネーターが企業と学生の間に入り、企業側にはプロジェクトの進捗管理や事業を成功させるためのアドバイスなどを行っています。
また、学生には生活面のフォローも手厚く用意しています。知らない土地で長期間生活するうえでは、地元のコミュニティに入り込めるかどうかが大事です。安価で宿泊できるシェアハウスを運営しており、別の企業にインターンしている学生と共同生活を送ることで「横」のつながりが生まれます。経済的にも精神的にも負担を軽減できるわけです。さらに、地域の移住者が集まって語り合う「イジュトーク!」という企画があるのですが、そこに参加してもらうことで移住者のネットワークに加わることもできます。

森山:まちづくり会社として地域で様々な活動をしている私たちが「ハブ」の役割を果たしていると思います。学生たちは、私たちを介して地域の様々なコミュニティや人と交流できるわけです。
プログラムが終了した後も、東京などで定期的に交流会を開催し、再会する機会をつくっています。こうした継続的な交流は重要で、卒業旅行で訪れるなど何度も再訪するインターンのOB・OG(卒業生)が数多くいます。

成果と展望

「能登留学」によって、地域にどのような変化が生まれているのでしょうか。

和ろうそく屋の高澤商店は、インターン生の導入で海外販路の拡大に成功した。和ろうそく屋の高澤商店は、インターン生の導入で海外販路の拡大に成功した。

岡本:例えば、1892年創業の老舗和ろうそく屋・高澤商店は、インターン生の導入で海外事業に本腰を入れることになりました。和そうろくは国内需要が低迷する中、数年前から日本雑貨や自然派製品を扱う海外小売店の注文が増えていたのです。その業務を担ってもらうため、2015年秋にインターンを導入。学生が写真共有アプリ「Instagram(インスタグラム)」などでの情報発信やメール営業などに取り組んだ結果、卸先が20店舗にまで拡大したのです。家業型経営が外部人材を受け入れる決断は簡単ではなかったと思いますが、そうした経営方針にも柔軟性が生まれた好例の1つです。

新たな構想として「能登の人事部」を掲げ、学生インターンの枠を超えた採用支援に乗り出していますね。

森山:地元の中小企業は慢性的な人材不足に直面しており、特に将来を考えると経営改革や課題解決にチャレンジできる優秀な右腕人材を外部から採用する必要があると考えました。「能登留学」はインターンという有期の形態ですが、正規採用にも踏み込み「能登の人事部」として広く活動していこうという狙いです。昨秋から具体的な活動を開始し、現在「WORK FOR にっぽん」では高澤商店が新たに立ち上げた海外事業部のマネージャーのほか、スポーツクラブのマーケティングと旅行会社のマネージャーの計3件を求人情報として掲載しています。今後、少しずつ増やしていく計画です。
正式雇用となるとインターンとは異なりハードルは決して低くないですが、「能登留学」の下地があるのは大きいですね。プロジェクトの設計や適性人材のマッチング、赴任後のサポートなど、そのノウハウを存分に活かしていきます。

地域が外部人材を活用する意義をどう考えますか。

森山:現在、経営感覚や課題解決力に長けた高度な人材は大企業や都市に集中しているのが実態です。ただ、大企業や都市で経験やスキルを身につけた後に、地域でキャリアアップする選択肢がもっと広がると嬉しいですね。決して「移住ありき」ではなく、最近は都市と地方の二重生活や副業なども話題になっていますし、そのムーブメントを盛り上げていきたいです。そして、地域に外部人材を受け入れることが当たり前の文化が根付くように、今後もユニークな活動を仕掛けていきますよ。

(2016年12月16日取材)

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