WORK FOR にっぽん(旧(WORK FOR 東北) - ともに働く。ともに育つ。

日本財団

地域の声〜岩手県釜石市〜

多様な人材の「活動」と「つながり」が、地域に活力をもたらす

オープンシティ推進室(地方創生室)室長 兼 釜石リージョナルコーディネーター協議会事務局長/石井重成氏オープンシティ推進室(地方創生室)室長
兼 釜石リージョナルコーディネーター協議会事務局長
石井重成氏

東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県釜石市は、震災後の復興を起点に外部人材の活用を積極的に進めており、数多くの成果を上げています。自身も震災後の2012年に移住・赴任した経歴をもつ石井重成・オープンシティ推進室(地方創生室)室長 兼 釜石リージョナルコーディネーター協議会事務局長に、外部人材を誘致する意義や活用ノウハウを聞きました。

外部人材活用実績

「WORK FOR 東北」(現・WORK FOR にっぽん)を通じて、どのような人材が赴任しましたか。

個人として3人、民間企業からの出向者1人の計4人を採用しました。30〜50代のスキルと経験を備えた人たちです。社員研修の制度設計を担当していた外資系IT企業の元社員が市職員の人材育成に携わったり、広報経験のある人が市の広報誌の編集業務を担ってくれたりしています。
成果の一例としては、初めて人事評価制度が導入されたことが挙げられます。年に2回、面談する機会を設け、それぞれの目標の進捗などについて聞き取り、評価しています。このように、外部や民間企業の感覚を取り入れることで、職員の人材育成が進んでいる実感があります。
「WORK FOR 東北」以外にも、市内の民間企業のU・Iターン採用を支援するWebサイト「Starting Over 三陸」や、復興支援員制度(総務省)を活用した「釜石リージョナルコーディネーター」(通称:釜援隊)などを通じて多くの外部人材を迎え入れてきました。例えば、釜援隊には現在15人が在籍していますが、このうち釜石の出身者が6人います(2016年12月時点)。2013年の発足当初はほぼ全員が移住者でしたが、その活動に触発されるなどしてUターンする人が増えているのです。卒業生の中には、地域で起業する人や市議会議員として活躍する人がいるなど、その後自立して地域に貢献しようという動きも生まれています。

募集・採用時

募集・採用の段階で、必要なことは何でしょうか。

外部人材と受け入れる側の双方にとって「よきご縁」とするためには、「とりあえず募集してみる」はNGです。募集するということは、その人の人生を変えることでもある。自治体がこうした感覚をもたないとうまくいきません。
また、採用前に求職者としっかり意識を擦り合わせ、赴任後のミスマッチを防ぐことが必要です。例えば、高いモチベーションをもつ求職者が赴任後、雑務ばかりに専念せざるを得ないような状況は望ましくありません。「こんなはずではなかった」といった事態は避けるべきで、外部人材を活用する意義や仕事の裁量を明確にする必要があります。こうしたことが、少しでもマッチングの精度を高めることにつながります。

具体的にどのような工夫をしていますか。

例えば、担当部署とオープンシティ推進室で業務要件を議論し、求める人材像のイメージをできる限りクリアにしますし、採用時の面談にも私が同席するようにしています。当事者のみで、お互い一方通行のコミュニケーションになってしまうのを避けるためです。この中間的な役割を担うのに必要な要素には、「実体験」と「信頼性」があります。外部から入ってきたという実体験を伴った目線と言葉を備え、地域や市役所内で一定の信頼性を得た人があいだに入ることで、効果的なマッチングの可能性が高まります。例えば私自身、赴任当初は地域に馴染むのに苦労した経験があるので、求職者に対しては決して簡単な業務や生活ではないことを恐れずに伝えたりしています。そうした観点では、その中間的なポジションを担える人材を組織内で発掘・育成することも重要になりそうです。
このほかに、採用のPRにおいては「WORK FOR 東北」(現・WORK FOR にっぽん)などの求人メディアのほか、採用イベントを主催するケースもあります。また、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)での情報発信も行っています。

赴任後

赴任後、パフォーマンスを発揮してもらうために工夫していることはありますか。

市民や移住者が集まる「釜石◯◯会議」。私生活でも地域コミュニティに溶け込むことで、円滑な仕事につながるという。市民や移住者が集まる「釜石◯◯会議」。私生活でも地域コミュニティに溶け込むことで、円滑な仕事につながるという。

1つには、市役所だけにとどまらず、市民コミュニティともつながりをもってもらうことが大事です。例えば、市民や移住者が地域の課題や将来について議論したり、行動したりする「釜石◯◯(読み方:まるまる)会議」という場があるのですが、そういった場に誘って、参加してもらう。多くの市民と顔見知りになることで、仕事以外の日常的なコミュニケーションが生まれるようになるのです。
実際、広報業務を担当している赴任者は昨年、市民とともに映画祭の企画・開催に関わるなど地域に溶け込んでいます。このように、私生活においてコミュニティに入り込めた人ほど日頃の業務にも好影響があり、職場内で自身のポジションを確立していく傾向が強いですね。

外部と内部の間で、文化の違いなどはありませんか。

よそ者を受け入れたり、新しい変化に順応したりすることに慣れていない組織の風習を変えることは、決して簡単ではありません。ただ、赴任者の熱心でひたむきな姿勢に触発され、次第に多くの関係者が協力姿勢に転じるようになっていきます。今では、外部人材との交流によって地域に新しい価値が生まれることを実感している方がたくさんいますし、私は自分たちの手で「文化はつくることができる」のだと考えています。

成果と展望

外部人材の活用がもたらした効果は大きそうですね。

外部人材活用の成果を受けて、市は昨年、まちづくりの総合戦略として「オープンシティ戦略」を打ち出した。外部人材活用の成果を受けて、市は昨年、まちづくりの総合戦略として「オープンシティ戦略」を打ち出した。

非常に大きいですね。市は昨年3月に、「オープンシティ戦略」(まち・ひと・しごと総合戦略)を掲げました。「市民一人ひとりが役割を持つ、もっとも開かれたまち」を理念に、「活動人口」(アクティブな市民)と「つながり人口」(ポジティブに関わる市外の人や企業)を増やすことで、地域の活力を維持・発展させていくという内容です。これは、「WORK FOR 東北」をはじめとする外部人材活用の手応えから生まれた考え方でもありますし、市の総合的な戦略として打ち出せたことは、それほど組織全体で外部人材を活用することの価値が浸透している結果でもあります。

今後に向けて、意気込みと展望を聞かせてください。

昨年設立した「ローカルベンチャー推進協議会」のイベントの模様。8つの自治体と広域連携し、首都圏から人材を誘致する計画だ。昨年設立した「ローカルベンチャー推進協議会」のイベントの模様。8つの自治体と広域連携し、首都圏から人材を誘致する計画だ。

震災からの「復興」という文脈を超えて、「地域」としてどう価値を高めていくかが問われています。そのため、クリエイティブ(創造的)な視点や業務がさらに求められることになります。外部人材を活用する重要性は、ますます高まっているのです。
その一環として、昨年9月には移住・起業支援の広域連携プラットフォーム「ローカルベンチャー推進協議会」を立ち上げました。全国8つの自治体と連携し、起業・経営スキルに長けた首都圏の人材を呼び込み、地域経済を活性化させようという試みです。これを含め、多様な人材の交流から生まれるオープンシティ戦略を推進していきます。

(2016年12月9日取材)

地域の声一覧をみる>>

事業主体

日本財団

協力団体

RCF復興支援チーム

ETIC.

HUG